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2011/06/01


虹色キセキ (60)

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あまりに暢気な顔に神楽は高杉に向けていた傘の先端を落とした。
「・・・・銀ちゃん・・」
「ね、大丈夫!!」
銀時の横で新八が神楽に視線を合わせて頷く。
神楽の身体から力が抜けていくのを見て新八と晴太はほっと息をついた。
「くーくー」
穏やかな寝息が静かになった部屋に響く。
安心した神楽だったが、あまりにも平和な顔をして寝ている銀時を見下ろしているとなにやら腹がたってきた。
ムッと口を尖らせ、銀時に近寄って耳元で大声で叫んだ。
「銀ちゃんっ!!」
「ぐーぐー」
「銀ちゃんっ!!起きるアル!!」
襟元をつかんでガクガクと上下に揺さぶるが一向に起きる気配がない。
「銀ちゃ~ん!!」
「神楽ちゃん!!そんなに揺らしたら銀さんの中身が出ちゃうっ!!」
「落ち着いて!!神楽ネェ!!」
「ぐーぐー」
「・・・・・・・起きないアル。」
上下左右と振り回すが起きる気配がない銀時に神楽は眉間に皺を寄せた。
銀時の襟首を掴んだまま高杉を睨む。
「銀ちゃんになに飲ませたアルか?」
「睡眠薬。」
神楽の恫喝を含んだ問いかけに煙管片手にしれっと高杉は答えた。
「・・・・あ、あの高杉さん・・さ、ま・・。」
緊張しながら新八はおそるおそるといった感じで高杉に声を掛けた。
すっと高杉の視線が神楽から新八に移る。
新八はごくりと喉を鳴らした。
相手はなんといっても攘夷戦争の英雄だ。この江戸、いや日本で知らない者はいないほどの超有名人だ。
緊張しないほうがおかしい。
しかも・・・・
なんか妙に威圧感があるんですけどォオオ~!
心中でヒイィと悲鳴を上げながら新八はしどろもどろに尋ねた。
「す、睡眠薬って、ど、どうして・・・そ、その銀さんに?」
高杉は新八を一瞥してから次に晴太に目を向け、わずかに首を傾げて
「そういや、なんでここにガキがいるんだ?新選組は一応武装警察だろうが。迷子の預かりでもしてんのか?」
と、物凄くいまさらのことを呟いた。
「え、いや、僕達は迷子とかじゃないです。」
「おさんどんにしちゃ若すぎると思うが・・・」
「おさんどんさんでもないです。」
「隊士志願者でもなさそうだしなァ。」
「ええと、僕は・・・」
高杉の疑問に答えようとして新八は思わず頭を抱えた。
言えない。ここの局長さんは姉のストーカーでその縁とかいろいろあって居候させてもらってます。なんて絶対言えない。
姉に対するストーカー行為については10も20も言いたいことがあったが、ここでそれを話してしまうと色々とマズイ。せめてここにいる間は黙っていた方がいいだろう。お世話になっている身だし・・。
と、ぐるぐると考えて新八は頭を上げた。
「・・・・・・・・・・いろいろとあってここで、というか銀さんにお世話になってます。」
「ふぅん。」
「お、俺もお、同じく!」
新八から逸れた視線がそのまま晴太を射抜くと晴太も右に倣えとすかさず声を張り上げた。
「へェ。」
口の端をわずかに上げて高杉は目を細めた。
妙に威圧感と色のある高杉を見上げていた晴太はあれ?と内心で首を傾げた。
なんだかどこかで見たことがある気がする。
テレビや新聞などではない。
実際にこの目で直に見たことがある気がする。
新八から聞いてこの人があの『高杉晋助』だと知ったが、それ以前にどこかで見たような気がする。
じ~と晴太は高杉を凝視した。
品のいい紺色の着物を見事に着こなしている。持っている煙管も上品な一品だ。
端整な顔立ちだが片目を包帯で覆っていた。その上に長めの黒髪が深い影を落としている。
一度見たら忘れないような人だけど・・・・。
う~んと晴太が内心で唸っていると銀時から手を放した神楽が高杉を睨んだ。
「銀ちゃん、なにしても起きないアル!大丈夫アルか!?」
「・・・・・・・銀さん。」
神楽に揺さぶられて殴られたのだろう。
真っ赤に染まった両頬に新八と晴太は心底、銀時に同情した。



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