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2011/05/10

虹色キセキ (59)


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飛んできたしゃもじを避けて銀時はぽんっと新八の肩を叩いた。
「まぁーまぁー連れてってやるって。ナニゴトも経験ってな・・・勿論、お妙には内緒だぞ。」
「・・・銀さん・・」
ふっと遠い目をして言われた言葉に新八は思わず顔を引き攣らせた。
姉にばれた時の場合のにっこり笑顔(勿論、目は笑っていない)と飛んでくる拳をついつい想像してしまった新八である。
銀時も同じような想像をしたのか微妙な顔をしている。
「私も一緒に行くアル!」
「・・・神楽もか・・・」
炊飯ジャーを片手に主張してきた神楽に視線を移して銀時はう~んと唸った。
「仲間外れにしたら、姉御に言いつけてやるアル!」
「お~い、いつのまにそんなに親しくなってんだ、お前ら・・」
「姉御にメガネのこと頼まれてるアル!!酢昆布3箱で!」
「しかも、なんか買収されてるし。いつの間に・・・」
「でも酢昆布3箱って・・・・」
「安いな。」
「姉上・・・・」
がくんと肩を落とした新八に銀時と晴太は思わず同情した。
「晴太のマミー、見に行くアル!!」
「う~ん、でもなぁー。」
さすがに神楽を連れて吉原は微妙だなぁと思っていると、それまでひっそりと(はしていない気もするが騒がしい中で1人泰然としていた)高杉がゆらりと立ち上がった。
なんだか背後に暗雲を背負っているような感じでやけに迫力がある。
思わず口を閉じて近寄ってくる高杉を銀時は見上げた。
新八も晴太も動きを止めて高杉を窺う。ただ神楽だけはきょとんとした顔で高杉を見上げていた。
「・・・おい」
「・・・・ナンデショウカ?」
不機嫌さを隠していない低い声に思わず片言になってしまう銀時だ。
心中では『やべェー。さすがに未成年を『吉原』に連れて行こうとするのはまずかったか・・』と盛大にヤバイ~と叫んでいた。
「どこに行くって?」
「え、いや、あのですね・・・・・」
「『吉原』って聞こえたが・・・」
「ええと・・・・」
新八がしっかりきっっぱりと大きな声で言っていたので聞き間違いと押し切るのは難しそうだ。
どうするか?と必死で考えている銀時を見下ろして高杉は見るものが見れば裸足で逃げ出しそうな剣呑で美しい笑みを浮かべた。
その笑みを真正面から見てしまった銀時は恐ろしさにぶるりと身体を震わせた。
「た、高杉さん?」
「どうせ、てめーは口で止めても止まらねェだろ。」
「あ、あの・・・」
なんとか言い逃れをと銀時が口を開いた瞬間、高杉はさっとあるものを指先で弾いた。
それはちょうど銀時の口に入り、そのまま喉に転がる。
「な、なんか飲んだ・・・」
青褪めて喉元に手をやるが、すでに何かは喉元を過ぎ去って身体の中に入ってしまっている。
なにを飲ませた?と顔を上げるとぐらりと視界が揺れた。
「あ・・れ・・・」
どさりと自分の身体が後ろに倒れていく。
「「銀さんっ!!」」
「銀ちゃんっ!!」
新八と晴太、そして神楽の叫び声が耳に届く。
暗くなっていく視界の端で高杉が眉間に皺を寄せているのが見えた。
そしてブラックアウト。






 

*  *  *
 




 


突然倒れた銀時に驚いたのは子供達3人だ。
新八と晴太は慌てて銀時に駆け寄り、神楽は壁に立て掛けていた自分の傘を素早く手に取り先端を高杉に突きつけた。
「銀ちゃんになにしたアルか?」
殺気を放つ神楽に高杉は目を細めた。
煙管を片手に持ったまま高杉は刀に手を伸ばすことはなかったが、神楽はごくりと喉を鳴らした。
戦闘種族『夜兎』として戦場に赴いたことはないが本能で高杉の力量を感じたのか、神楽は本格的に戦闘態勢をとった。
そんな中、ピリピリとした空気に気付いた新八と晴太が銀時から2人に視線を移して思わず叫んだ。
「神楽ちゃんっ!!?」
「お、落ち着いて。神楽ネェ!!」
「銀さんなら大丈夫だから!!」
「だって、銀ちゃんっ突然っ」
「寝てるだけだよ!!」
「・・・・・」
晴太に叫びに神楽は高杉から視線を逸らして2人を見た。
「銀ちゃん・・・」
「寝てるだけだから大丈夫っ!」
傘の先端は高杉に向けたまま神楽はきょとんとした顔になった。そこには先ほどまでの緊迫した様子はない。
「ほら、見て!」
新八は神楽に銀時の様子が見えやすいように身体をずらした。
そこには仰向けで口を開いたまま暢気な顔で寝ている銀時の姿があった。


 

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