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2011/01/31

虹色キセキ (57)

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いつもなら朝起きて、顔を洗ってから食堂で朝食を取る銀時だったが高杉晋助が部屋にいるのでなんだか出て行きにくい。
だから、どういうこと!?とあわあわとしている新八と訝しそうに高杉を見ている晴太に朝食を持ってきてとお願いして、銀時はもぞもぞと服を着替えた。ちなみに神楽も押入れの中でお着替中である。
黒の洋服の上に白い着物。帯の上に細いベルトを締めれば完成だ。
着替えが終わり振り返れば高杉と目が合ったので銀時は思わず眉を寄せた。
ヤローの着替え見てたのかよ・・と嫌味の1つでもと言うべきかと思った銀時だったが、先に高杉が口を開いた。
「お前・・・怪我は?」
「へ?」
「近藤に拾われた時、大怪我してたんだろ?傷は?」
「・・・・・とっくの昔に治って・・ます。」
やけに真剣な眼差しをしている高杉に気圧されながら銀時は答えた。
敬語が半端に混じったが高杉は気にもならなかったようで、そうかと少し安心したように目を細めた。
「・・・・・・・・あ、あのですね・・・」
なんだか調子が狂う。
桂とはまた違う高杉の態度に銀時は目を彷徨わせながら尋ねた。
「さっき言ってた『先生』って・・・」
「松陽先生のことだ。・・『吉田松陽』。知ってるだろ?」
「そりゃァ、モチロン。有名じゃん。」
「・・・・・・銀時。松陽先生はお前の育ての親だ。」
「は?」
高杉の言葉に銀時は目を点にした。
「先生もお前に会いたがってたけど、いきなり押しかけたら混乱するだろうからって・・・」
ふうと紫煙を吐いて高杉はにやりと口の端を上げて笑った。
「覚悟しとけよ。とりあえず説教は記憶が戻ってからってことになったが、言いたいことは山ほどあるからな。」
「ハイ?」
なにそれ?と顔を引き攣らせながら銀時は悪寒が走ったのか身体をぶるりと振るわせた。
「あの・・・高杉さん・・」
「・・・・・晋助」
「へ?」
「『さん』付けなんてするんじゃねーよ。気持ちワリィ。」
「そりゃ、どうもー。」
気持ち悪いとまで言われたので銀時は敬語を使うのは止めることにした。
それにしても気持ち悪いってなんだ!?と内心ムカッとしながら銀時は高杉を睨むが、睨まれた本人は視線に気付かないようで、何故か床の間に視線を向けていた。
「お前、刀は?」
「・・・・・そこにあるじゃん。」
ピッと人差し指で床の間にある刀を指差す。
数えるぐらいしか持ったことがないが、定期的に山崎が手入れをしているので刃は綺麗だ。
片手に煙管を持ったまま高杉は刀台にある刀を無造作に手に取って鞘から取り出した。
「・・・・お前、これ、使ってないだろう。」
「・・・・・・・・・」
思わず銀時は目を逸らした。
「他の刀、使ってんのか?」
「ああ~それはー・・・」
高杉は刀を鞘に戻して刀台に戻し、銀時に目を向けた。
銀時は誤魔化すようにへらりと笑ってから無造作に壁に立てかけてある木刀を手に取った。
「・・俺はこれ使ってる。」
「木刀?」
「コレの方が使い勝手がいいんだよ。」
「・・・・・・」
銀時の手にある木刀を見下ろして、高杉はそうかと頷いた。
文句はなしかとほっと息を吐いて銀時はぼりぼりと頭を掻いた。
どうにも自分のペースが保てない。なんだか尻の辺りがむずむずとして居心地が悪いというか・・。
なにか話さなければいけない気がするのに何を言えばいいのかわからない。
うう~と内心で唸りながら銀時はちらりと高杉の顔を窺った。
長めの黒い前髪の合間から白い包帯が覗いている。包帯で隠されていない方の目は鋭く意志の強さが窺えた。
片手で煙管を持っているのがなんだかとても様になっている。色街に行けばきゃーきゃーと騒がれるタイプだ。端整な顔といいなんだか土方に似てるなと思いながら銀時は、ジロジロと高杉の顔を凝視していると目の下に薄っすらと隈が出来ているのがわかった。
「・・・隈、出来てんぞ。」
「あ?」
「ちゃんと寝てんのか?」
「・・・ああ。」
「嘘付け。」
「嘘じゃねェー。」
「お前、身体弱いんだから無理するなよな。ちゃんと飯食ってるか?」
「ちゃんと寝てるし、食ってる。そもそも身体弱いなんて子供の時の話だ・・ろ・・・・」
唐突に高杉は言葉を切って銀時を凝視した。
「な、なんだよ・・」
やけに真剣な眼差しを向けられて銀時は思わず身体を引いた。
「銀時。お前、記憶が・・・」
「へ?」
「思い出したのか?」
「え?いや、全然・・」
高杉の言葉に頭を横に振って、銀時はあれ?と首を傾げた。
そういえばなんだかスルッと言葉が口から出てきたがまったく意識してなかった。
なんで俺、あんなこと言ったんだろう?と首を傾げたまま唸っていると、バンっと押入れの襖が開いて着替えを終えた神楽が飛び出してきた。
「銀ちゃん!お腹すいたアル!!」
「先に顔洗って来い。」
「わかったアル!」
銀時の言葉に頷いて神楽は足取り軽く部屋を出て行った。
昨夜、強制送還にはさせないから大丈夫だと言い聞かせたからか高杉のことはあまり気にしていないようだった。
しかし神楽が気にしていなくても高杉の方は気にしているようだ。
「・・・・・あの『夜兎』どうするつもりだ?」
「いや、ほら、まだアイツ子供だし・・・」
「またか・・」
「へ?」
忌々しそうに呟いた高杉に銀時は首を傾げた。
「てめーはまったく懲りてないみたいだなァ。」
「はい?なんのこと?」
銀時の疑問には答えず、高杉は袂から何かを取り出してそれを銀時に放り投げた。

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