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2011/02/13


虹色キセキ (58)

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高杉が投げたものを思わず受け取る。
掌に収まったものを見下ろすとプラスチックの小さなケースの中に錠剤が5つ入っていた。
「・・・・なにこれ?」
「睡眠薬。」
「・・・・・・・・・・」
さらっと答えた高杉を顔を上げて銀時はまじまじと見た。
「一錠でゾウも昏倒出来るすぐれもんだ。」
「いやいやいやいや」
片手をひらひらと横に振って銀時はツッコんだ。
「なに物騒なもん渡すんだよ。コレ、一体どうしろって・・」
「あのガキに盛れ。」
「お~い。」
「夜兎にも効果があるのは実証済みだ。」
一体だれに試したんだろうと銀時はちょっと遠い目をした。
「・・・あのー高杉さん・・」
「晋助、だ。」
「・・・・晋助さん?様?」
「『さん』も『様』もいらねェーよ。薄気味悪い。」
エライ言われようだと思いながら銀時はなんだか色々と面倒くさくなってきた。
そりゃァ、さっきもタメ口だったけど、もうそれで通していいんだろう。
思い出していないが親しい間柄だったようだし。よし、そうしよう。後で鴨ちゃん辺りに何か言われそうだがもう知らん。
開き直った銀時は大きくため息をついて渡されたものを投げ返した。
「おい。」
「神楽は俺がちゃんと面倒見るし、そんなもん盛る気はねェよ。」
「お前、またっ!?」
「は?なに?俺、前も夜兎の面倒見てたの?だったらいいじゃん。」
「よくねェーよ。」
「覚えてないけど面倒見てたんだろ。だったら・・」
「戦時中にあの夜兎のガキのせいでどれだけ迷惑を被ったか今すぐ思い出せ。」
「いや、思い出せと言われても・・・」
「夜兎と関わって碌な目に合わなかったくせにオメーはまた関わる気か?」
「え?そうなの?一体どんな目にあったんだ俺?」
うわ~と銀時は顔を歪めてから、肩を竦めた。
「まァ、覚えてないし・・・。神楽は食欲が旺盛過ぎんのが困ったとこだが、まだまだガキだぞ。」
「ガキでも夜兎だ。」
「そう目くじらを立てなくても・・・」
これは結構、根が深そうだ。どうしようと困っていると開けたままになっていた障子戸からひょいと新八が顔を出した。
「あの~」
なんだかとても入りずらそうだ。
その気持ちはわからんでもないと思いながら銀時は新八を手招いた。
新八は朝食を載せたお盆を手におそるおそるといった感じで部屋に入ってきた。
その後ろを晴太が続く。
晴太は神楽の分だろう炊飯ジャーを持っていた。
「銀さん、土方さんが呼んでましたけど・・・」
「ああ~後で顔出すわ。」
無視して土方の方から怒鳴り込んでくるのが日常だが、これ以上ややこしい事態になってほしくないので珍しく銀時は飯食ってから土方のところに行くことにした。
そろ~とお盆を漫画や雑誌が置いてある机の上に置いて、新八はそそっと銀時に近づいた。
「・・銀さん」
「あん?」
「た、高杉さんがどうしてここに・・・」
ちらちらと高杉を窺いながら小声で新八は尋ねた。
高杉は新八達が現れてから、煙管を片手に先ほど新八達が入ってきた障子戸の近くに座って3人を観察するように見ている。
先ほどの話はどうやらいったんお預けらしい。このまま忘れてくれたらありがたいんだけどなァと思いながら銀時はそっと高杉から目を離して答えた。
「気にすんな。」
「気にしますって!!」
すかさず新八のツッコミが入る。
相変わらずツッコミの腕だけは確かだと感心しながら銀時はため息をついた。
「さっき桂さんもいましたよね。銀さん、何かしたんじゃ・・・」
「お~い、ぱっつぁん、俺のことなんだと思ってるわけ?」
なんだかとてつもなく不名誉な勘違いをされているようだと気付いて銀時は新八にデコピンをして、朝のイチゴ牛乳を手に取った。
「お腹すいたアル!!」
そこに神楽が戻ってくる。そして、朝食を見て飛びついた。
「きゃほ~。いただきますアル!!」
「よく噛んで食えよォ~。」
のんびりと神楽に注意しながら銀時はイチゴ牛乳をゴクゴクと飲んだ。
「銀ちゃんっ!今日はなにするアルか?」
「あ~そうだなァ~。」
もごもごと口を動かしながら神楽が尋ねる。
銀時は息を吐いて炊飯ジャーを神楽に渡している晴太に視線を移した。
晴太の母親がいる『吉原』は天人に支配されている地下遊郭街だ。
国のー江戸の中にありながらそこは政府の手が届かない特殊な場所だった。治外法権を認められている天人が支配する街。勿論、真選組も手が出せない場所だ。
そういや、近藤や土方は接待か何かで行ったことがあったっけ。羨ましいことに。
接待等の時は留守番をしている銀時はその時のことを思い出して眉間に皺を寄せた。
水商売の女と付き合うのは苦手だが、綺麗なネェちゃんにはちやほやされたい銀時だった。
「晴太のマミーに会いに行くアルか?」
「えっ?行くんですか?吉原に?」
神楽の言葉に驚きとちょっぴり期待が混じった顔をしたのは新八だった。
そんな新八にすぐさま神楽の鋭いツッコミが入る。
「フンっ。これだからどーてーは・・・」
「神楽ちゃ~ん!!」
毒づく神楽に新八がすぐさま声を荒げる。
「まァーまァー。ほら、ぱっつぁんはまだまだガキだからなァ~。・・・興味あんのか?」
にやりと人が悪い顔で笑った銀時に、新八は思わず持っていたしゃもじを投げた。

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