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2011/01/19



虹色キセキ (56)

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朝が弱いという自覚はある。
だから目を開けて飛び込んできた顔を見てもまだ寝てんのかな俺?とぼんやりと思った。
夢に出てきた顔がある。
よく新聞やテレビにも出る顔だ。知名度でいえばおそらく今の将軍よりも高いんじゃないかと思うほどの。
何度か瞬きをして銀時は自分を見下ろしている2つの顔をじっと見た。
「起きたか銀時。相変わらず朝が弱いなお前は。」
「なかなか治んねェーな。お前の低血圧は。」
1人は真面目に、もう1人はどこか呆れたように言う。
また何度か瞬きをして、ようやく頭が働き始めた銀時はぱかりと口を開いた。
「ナニゴト~!!!」
叫んで、掛け布団ごとザーと横に転がった。押入れの襖にぶつかり、銀時はよろよろと上体を起こした。
「どうしたアル銀ちゃんっ!!敵襲アルかっ!?」
銀時の声と襖にぶつかった音で目を覚ましたのだろう。
押入れで寝ていた神楽が傘を片手に襖をスパンっと勢いよく開けた。
そして銀時の布団の上と横にいる2人を見て目を見開く。
「よっ夜這いアルかっ!?」
「そんなわけあるかァアア~!!」
神楽の言葉に銀時は思わずツッコんだ。
「あっ、銀ちゃん。」
叫び声に神楽は下に銀時がいることに気付いた。
「なにごとネ?」
「それは俺が聞きてェーよ。」
顔を引き攣らせながら銀時は2人に目を向ける。
驚いた自分が間違っているような気になるほど2人は落ち着いていた。
「・・・・・・ナニカゴヨウデショウカ?」
「昨日、言ったであろう。会いに来ると。」
涼しげな顔で言い切ったのは桂だ。
ああ、確かにそう言ってたのは聞いたけど、昨日の今日に来るとは誰も予想しねェよ。
心の中で毒づいて銀時は顔を引き攣らせながらも尋ねた。
「ナンデココ二?」
「お前に会いにきたからだろうが。」
「いやいやいや」
桂の答えに思わず顔を横に振る。
「なんで人が寝てるのに部屋に入り込んでんの!?なんで誰も声掛けてくれねェーんだっ!?」
銀時の叫びに肩を竦めてさらっと答えたのは高杉だった。
「誰にも声掛けてねェーからな。」
「ハイ?」
「そこの塀から入ったのだ。意外に忍び込むのは簡単だったな。もう少し警固はしっかりさせた方がいいぞ。」
「不法侵入!!?」
幕府のお偉いさんとは思えないほどの身の軽さだ。
自分も時々やるが俺がやるのとはワケが違うーと思う。
「いちいち門番に話通すのも面倒だからな。」
ごそごそと袂を漁って、高杉は煙管を取り出した。
昨日は眼帯をしていたが今日は包帯で片目を覆っている。
そういえば高杉晋助は隻眼だったなと今更のように銀時は思い出した。
「ちゃんと『おじゃまします』と言って入ったぞ。」
「意味ねェーよ!!ちゃんと玄関から入って来いよ!!」
「まァ、そんな細かいことが置いておいて・・」
「全然細かくねェーよ。何この人。本当に幕府のお偉いさん?」
思わず頭を抱えて嘆く銀時の言葉に桂はわずかに目を伏せた。
「・・・・・何も思い出してないのか?」
「んあ?」
「先生のことは?」
煙管を片手に睨みつけるような眼差しで問いかけてきたのは高杉だった。
銀時はどこか居心地が悪そうに頭を掻きながらため息をついた。
「・・・・・・覚えてない。」
「・・・・・・・・・」
静かに目を伏せる高杉に銀時はとんでもなく悪いことをしたような気がして、焦りながら口を開いた。
「あ、でもなんだか時々、夢見る。」
「夢?」
「多分、昔の夢。ああ、そういや『ヅラ』って・・」
「ヅラじゃない桂だ!!」
「・・・・・・・・・ああ、そういやそんなこと言ってた気が・・・」
銀時の言葉にすぐに反応したのは桂だ。最早、反射だ。
ぼりぼりと頬を掻いて銀時は立ち上がった。
遠くからドタバタと足音が近づいてくる。
おそらく新八だろう。足音は2つ。もう1人は晴太だろう。
昨夜は新八が寝泊りしている客間に晴太も放り込んだし。
銀時は布団の脇に座っている2人に視線を移した。
「ああ、で?どうすんの?お2人さんは?」
段々と言葉が崩れていくのは仕方がない。そもそも丁寧な言葉遣いなど慣れていないのだ。2人とも気にしていないようだし、ま、いいかと銀時は半ば敬語は諦めている。
「俺はそろそろお暇する。やらなければいけないことが山積みでな。」
「そりゃゴクローさん。」
軽い調子で銀時が言えば桂はどこか嬉しそうに笑みを浮かべた。
「・・記憶がなくなっても貴様は変わらんな。」
俺ってどんな奴だったんだろう?と思いながら銀時は立ち上がって踵を返した桂の背中を見送った。
「銀さんっ!!朝ですよって・・っ桂小太郎!!?」
障子戸を開けながら叫んだ新八がちょうど部屋を出ようとしていた人物に驚いて目を見開く。
「邪魔したな。」
ひらりと片手を振って桂は庭を突っ切って去っていった。
ぽかんと口を開けて桂を見送っていた新八はナニゴト!?と驚いて振り返ると部屋の中には高杉晋助がいてまたまた驚いた。
そんな新八の様子にため息をつきながら銀時は寝癖でぐしゃぐしゃになった髪を更に掻き回した。


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