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2013/08/20


虹色キセキ (66)



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銀時が眠り続けて3日が過ぎた。
神楽も新八もそして晴太も銀時の傍をほとんど離れなかった。事情を聞かされた近藤や土方、沖田も日に何度か様子を見に来る。
眠っているだけというのは知っているがそれでも心配していた。
眠る銀時を取り囲んで座り込んでいる3人は世間話ーというか銀時の話題で盛り上がっていた。1日目は静かにぼそぼそと話していたがさすがに三日も経つと遠慮というものがなくなっていた。うるさくすれば起きるかもしれないという希望もあったが。
新八が銀時に始めて会った時のことをオモシロおかしく話すと神楽も同じように始めて会った時のことを話し出す。2人の話を聞いて晴太は声を出して笑った。そのうち話は家族のことになった。
「じゃぁ、晴太君は吉原で生まれたんだね。」
「うん。育ててくれたおじいちゃんが天女みたいな女の人がおいらを預けたって教えてくれたんだ。母ちゃんはおいらをじいちゃんに預けてすぐに捕まって吉原に連れ戻されたんだって。」
「そうだったアルか。」
「じいちゃんが死んでからおいら、何度か母ちゃんに会いに吉原に行こうとしたんだけどいつも追い出されて・・。」
「日輪っていう名前なんだね。」
「うん。じいちゃんが教えてくれた。母ちゃんが捕まった時にそう呼ばれてたって」
「高杉さんが見つけてくれるといいね。」
「うん。」
あの日、なぜ吉原に行こうとしているのか高杉に訊かれた新八と晴太は洗いざらい話した。ちなみに高杉自身は尋問したつもりはない。しかし訊かれた身としてはアレは尋問にふさわしいものだった。なにせ妙に威圧感があるのだ。神楽はまったく気にしていないようだったが新八と晴太は何もかも話してしまった。だって話さないという選択肢がまったくなかった気がしたーとは後日の新八談である。
話を聞いた高杉は探してやるから『吉原』には近づくなと釘をさしたのだ。
「あの片目はちゃんと晴太のマミー捜してるアルか?やっぱり私達で・・」
「いやいやいや。あの高杉さんだよ。ちゃんと捜してくれてると思うよ。」
「なんで新八は片目を信用しているアルか?」
「だって高杉さんだし。「鬼兵隊」の総督だよ。攘夷戦争の英雄だよ。」
「よくわからないアル。片目ってそんなに有名人アルか?」
「うん。多分、この国で知らない人はほとんどいないんじゃないかな。」
「オイラ、寺小屋にも行ってないしテレビもほとんど見ないけど名前なら聞いたことあるよ。スゴい人なんだよね。」
「うん。」
「ふーん。まぁ、強いのはわかるアル。」
「本当に強い人なんだよ。だってあの攘夷戦争を鬼兵隊って隊を率いて勝利に導いた人なんだから。」
「じゃぁ、一緒に来てたヅラもアルか?」
「ヅラって・・・桂さんのことだよね。」
ヅラと呼ばれてすかさず桂だと反論していた人を思い出す。幕府の偉い人なのにまったく偉そうには見えなかったが、高杉晋助と並んで有名な人だ。なんだか扱いが雑だった気がしないでもないが・・。
「桂さんも高杉さんと同じように攘夷戦争で活躍した人だよ。でも終戦後は政治の方で活躍している人だから頭脳派なのかもしれないね。」
新八は桂に出会った時のことを思い出して・・・あれ?なんだか変な場面しか思い出せないと思わず首を傾げた。
「でも、もう三日も経ったアルよ。銀ちゃんも起きないし・・」
膝を抱えて眉を寄せた神楽は眠っている銀時を凝視した。そして、すくっと立ち上がる。
「神楽ちゃん?」
「神楽ネェ?」
立ち上がった神楽は拳を握りしめると間髪いれずに銀時を蹴り上げた。
「早く起きるアル!!」
「ぎゃあああー銀さ~ん!!」
「うわぁああー」
天井に頭がめり込んだ銀時を見上げて新八と晴太は悲鳴を上げた。
蹴り上げられた余波でぶらんぶらんと足が揺れている。しかしそれもしばらくすると止まった。
奇妙な沈黙が落ちる中、おそるおそる新八は銀時の様子を窺った。反応はない。頭はどうやら天井を突き破っているらしく首から下しか見えない。
「ぎ、銀さん・・」
新八が声を掛けるが反応はない。
コレ、どうすればいいんだろうか?と考えているとぴくりと手が動いた。
「あっ!銀ちゃん、起きたアルか?」
嬉しそうに神楽は銀時の足を掴んで今度は布団の上に叩きつけた。
最早、言葉もない新八と晴太はそっと仰向けで白目を剥いている銀時を見下ろした。



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