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2013/07/21


更新をぼそぼそと再開します。
短いですが長くお付き合いいただければ嬉しいです。


虹色キセキ (62)

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地下都市『吉原桃源郷』
夜兎の王『鳳仙』の治めるそこは幕府も手が出せない特殊な場所だった。攘夷戦争中に地上から地下へと移ったそこは完全な治外法権の場になっていた。
そんな場所に春雨から鳳仙に来客が訪れていた。
「・・ほう、手を貸せと?」
夜王という異名を持つ鳳仙は話を聞いて笑みを浮かべた。獰猛な笑みだ。相対していた人物は思わずひゅっと息を飲んだ。
威圧感にイヤな汗が流れる。
本来ならここに来るはずだったのは夜王と同じ夜兎であり春雨の幹部のはずだった。それがちょっと用事があるとふらりといなくなったのだ。
残された者達で厳選なるくじ引をして結果、大任を押しつけられた。
運がないと嘆いても役目は果たさないとどんな目に合うかわからない。
上からの言付けをなんとか話したが、どういう動きをするのかまったくわからなかった。
怒っているのか笑っているのか・・。
ああ、助けて団長!!と事の発端になった相手に助けを心の中で叫ぶが勿論、そう簡単に助けなど現れない。
酒を飲みながら鳳仙は春雨からの使者を観察した。
どうにも自分に話を持って来るには小者だ。一睨みすれば気を失いそうなほどの者を使者にするとは春雨が己を舐めているのか、それとも・・。
考え込んだ鳳仙はふと顔を上げて窓を見た。そこによいせと言いながら現れた人物がいた。夜兎だ。見覚えはあったが・・。
「どうも、窓から失礼します。」
飄々と現れた男に使者は安堵の息を吐いた。
「副団長。」
「ああ、後は俺が相手するから・・」
ひらひらと手を振ると安心したように一礼して使者として来ていた者は部屋を出ていった。
「すみませんねー。本当ならうちの団長が話をしに来るはずだったんですがちょいと野暮用らしくて。」
肩を竦めて副団長と呼ばれた夜兎ー阿伏兎は鳳仙に相対するように座った。
「神威か」
「ええ」
頷いて阿伏兎はぼりぼりと頭を掻いた。
地球に降り立った途端、ちょっと用があると団長である神威は制止の声を無視してどこかに行ってしまった。勿論、追いかけたがどうやら相当急いだらしく見事に見失ってしまったのだ。
地球に行くと聞いた途端に嬉しそうにしていたのでてっきり師である鳳仙に会うのを(ただ会うだけではなく勿論やり合うのを楽しみにしてたんだろうが・・)楽しみにしているのだろうと思っていたがどうやら違ったようだ。他にあの戦闘狂が楽しめる相手がいるのだろうか?
そんなことを思いながら阿伏兎は鳳仙に春雨からの伝言を伝えてどうするのか尋ねた。
「どうです?この地下だけじゃなく地上にも手を伸ばすのは?」
「ふんっ。儂は誰の指図も受けん。」
「でしょうねぇ。」
「話は儂のところだけか?確か上にはあの女もいるだろう。」
「あの女?」
「ああ。そういえば春雨から派閥争いに負けて居場所を失って逃げたんだったな。」
その言葉にはっと阿伏兎は目を見張った。
「まさか・・第四師団の・・」
「団長が組織の金を持ち逃げか・・。春雨も随分と腑抜けになったな。」
阿伏兎はため息をついた。
まさか行方しれずになっていた第四師団団長がこの星にいるとは思ってもいなかったのだ。まさか団長はそれを知って・・るわけないな。あの戦闘狂がそんなことを知っているはずはないと即座に阿伏兎は却下した。
「そりゃぁ、知りませんでしたよ。ちなみにどこにいるんですか?」
「さぁな。」
答える気がない鳳仙は返事の代わりに酒を飲んだ。
「まいったねこりゃ。仕事が増えたか。」
「ふん。相変わらずだな。」
「団長がアレなんで下は苦労するんですよ。今回も団長に逃げられてますしねぇ。でも、まぁ、アンタのとこには顔を出すと思いますよ。」
「ふんっ」
鼻で笑って鳳仙は酒を飲んだ。
「ワシを殺しに来るか?」
「ハハハ」
バレてるなこりゃと笑いながら阿伏兎は思った。
「団長はその気があるかもしれませんが、上はそうじゃないと思いますよ。せっかく手を伸ばした星が思っていた以上に抵抗が激しくてマゴついてるって感じですかね。『侍』ですか。俺もちょいと興味ありますね。」
「だろうな」
頷きながら鳳仙は酒を飲む。
鳳仙も『侍』には興味はあったが遣り合ったことはなかった。腕だけではなく中には頭も切れる者がいるらしい。
最も鳳仙がこの星に来たときにはすでに戦争は終盤を迎えようとしていいた。ここまで手が回らなかったというのが本当のことだろうと鳳仙は思っている。
しかしあれから数年が過ぎた。
そろそろ幕府側がなんらかの動きをしてもおかしくはなかった。
勿論、『天導衆』が『春雨』と手を組んだことからもわかるように幕府中枢に食い込んでいる天人も動き出す頃合いだろうが・・。
そんなことを考えていた鳳仙はふと思い出した。
「そういえば神威が懐いていた『侍』がいたな。」
「えっ!?団長がっ!?」
「ああ。」
「・・・・・そりゃ、なんていうか・・・」
阿伏兎はあの団長が懐いている人物がいるとは想像出来ずに妙な顔をして固まった。


 

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