忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2010/07/19

10.怪我


拍手




青白い顔でよたよた歩いている姿を見かけたのですぐ傍にあった空き部屋に蹴り入れた。
突然の俺の蹴りを避けきれず土方はずさっと畳みの上に転んで、すぐさま上体を起こした。
「・・っなにしやがるっ!!」
「文句は後から聞いてやるから、ほれ、手ェ出せ。」
「ああー!?」
「怪我してんだろ。」
「・・・・・・・・」
御用改めが終った後。怪我人は全員、病院に押し込んだが、ここに1人怪我をしているのに仕事をしているバカがいる。
俺は呆れながら持っていた救急箱を置いて、畳の上でぶすっとした顔で座っている土方の前に腰を下ろした。
「ほら、手」
しぶしぶ出した左手の手首を掴んで隊服の袖を押し上げる。黒の隊服は血が染み込んでいて重くなっていた。
わずかに眉を寄せた土方の様子は無視して斬られた痕を見た。
血がじわりと滲み出ている。
「・・・・こりゃ、縫った方がいいな。」
「必要ねェよ。」
「3針ぐらいかな。」
「だから必要ないって言ってんだろうが。」
「裁縫道具で俺が縫うのと医者を呼ぶのと病院に行くのとどれがいい?」
「・・・・・・んだよ、その三択。しかも裁縫道具って・・・」
「まだ出血してる。これじゃァ縫わないといけねェよ。」
応急処置に救急箱から包帯を取り出す。
「必要ねェよ。」
「バカ!!だね。ばい菌でも入ったらお前、腕切り落とすことになるんだぞ。とっとと治療してこい。」
白い包帯を強く巻く。どうせ病院に行くまでの気休めだ。
「だから・・・」
「ジミー呼んできたから早く病院行け。ふくちょーは沖田君が仕込んだ激辛七味マヨネーズで病院に運ばれたってことにしといてやる。てめーが庇った隊士の耳には情けない副長の話しか入らネーよ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「はい、出来た。」
ドタバタと騒がしい足音が聞こえてくる。ジミーが呼びに来たのだろう。
救急箱の蓋を閉じて立ち上がる。
ふてくされた顔をした土方君を見下ろしてつい笑いたくなった。
「お大事に~副長さ~ん。」
踵を返す。
後ろからぼそりと「ありがとよ」という声が聞こえて来て俺はますます笑いたくなった。


PR