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2010/05/30



黎明が来て


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狂おしいほどの愛しさと哀しさとそして幸せを

失うものなど何一つなかった子供に失えないものを


明けない夜はないと

世界の理を教えてあげよう


さぁ、世界が-夜が明ける






地平線に沈もうとしている太陽。
羽ばたきの音と鴉の鳴く声。

積み重なった屍の上にいる子供に大人が声を掛けた。
敵意をみせる子供に渡されたのは一振りの刀。
錆びていない、血の付いていない刀を子供はこの時初めて手にした。
戸惑う子供に差し伸べられた手は害意や悪意のない白い手。
子供は迷って、差し伸ばされた手を掴むことはせずにただ付いてくことを決めた。
子供ながらに迷って考えて決断されたことに大人はただ柔らかな笑みを浮かべた。


「私は吉田松陽といいます。あなたは?」

問いかけに子供は頭を横に振った。

「・・ない。」

たどたどしく紡がれる声。
会話などほとんどしたことのない子供の声は掠れていた。

「そうですか。では、私が貴方の名前を付けてもいいですか?」

同情も哀れむこともせずに事実を受け止めて、さらに自分の要求を話す大人に子供は多いに戸惑った。

「いい名前を考えますから。」

ね、と笑顔なのに妙に迫力がある大人に子供は戸惑いっ放しだ。
しばらくして押し切られるように子供は頷いた。
そんな子供を見て大人はいっそう笑みを深めた。


「どんな名前がいいですかねぇ。」


楽しそうにそんなことを言う大人に子供は変な奴だと思いながらも付いていくことは止めなかった。



家路に向かう親子のような2人を夕日が照らしていた。

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