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2010/05/3


沈んだ方舟



拍手






咲いていたのは曼珠沙華。


赤い『花』





獣を追い払ったり、穴を掘ったり、木の枝を切ったり・・・。
落ちていた棒ーそれが『刀』と呼ばれるものだということは後から知ったーがとても便利なものだったので持ち歩くようになった。
大きく重いそれを手放せなくなったのは、いつだったか・・・。
はっきりと覚えてはいなかったけれど、気付けばそれはなくてはならないものになっていた。
持っていると安心した。
無いと不安だった。
だからいつも持ち歩くようになって、それで・・・。





赤い花が咲いていた。


赤い、紅い、花だった。




その横で同じように赤いものが広がっていた。







罵倒されることも、石を投げられることも、鍬や鉈で襲われることもあった。
逃げること、隠れることは当たり前のことで、だから、初めてだったのだ。


反撃をした。

このままでは殺されると思った。

だから、持っていた刀を鞘から抜いた。



両手に伝わる重い感触と刀身を伝う、生温かな液体。
悲鳴と怒声と、そして叫び声。



わけもわからずに、ただ、手が震えた。




子供が、その『意味』を知ることになるのはずっと後のこと。


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